2006年07月11日

プロセスを観客に見せるな!

プロセス……(1)手順。方法。
      (2)進行状態。過程。工程。経過。道程。

世にドラマよりも面白いドキュメンタリー番組はよくある。

ドラマとドキュメンタリー、確かにフィクションとノンフィクション、つまり扱っているものが虚構か真実かの違いはあるけれど、一番の違いは「結果」を作品として見せるか、それとも「経過(プロセス)」を作品として見せるかだと思う。


「ドラマのたった一つのシーンでも、様々な困難なプロセスを経て創られていくわけけど、それを見せちゃあ絶対にいけないんだ……」

以前、レッスンで、コーチがある女の子にそう言っていた。

「君は、演技を楽しんでいるわけではなくて、大変で難しいことをがんばっている”自分”を見てもらいたいと思っている……」


誰でも、ついがんばっている姿を誰かに見てもらいたくなるよね。
「こんなにがんばってるんだ。見てくれよう!」

でもそれは、作品の出来には全く関係ない。つまり役者が苦労して演じようが、あっさり簡単に演じようが見ている観客にはどうでも良いこと……。
逆に「雨の中ずぶぬれになって大変だな……」「泣きながら笑ってるよ、この役者がんばってるな」そう思われた瞬間、それはもうドラマではなくなっている。つまり、ドラマの世界の魔術からもう観客は抜け出て、冷めてしまっているんだ。

役者に必要なのは、意地でもそれを感じさせないように、つまり、一人の「役者」ではなく「人間」がそこに存在しているのだということを、必死で頑張って表し、それを伝えること。

一人の”役者”が見えた瞬間、それは誰も見向きもしない、安っぽいドキュメンタリーに成り下がってしまう。

そう言うことをコーチは言っていた。


今日、渋谷の街中で、何年かぶりに偶然、N子に会った。
N子とは、東京に出て来た当初通っていた演技レッスンの仲間だった。

近況を聞くと、N子は、メチャクチャ厳しいことで有名な時代劇スターSさまのお付きをしばらくやっていたらしい。マジ……!?

「実家が破産したり、大変だったの……でもそんな状況でも、必死でやっていたの」

「そう……」

あのSさまのそばでずっといたというだけで、すでにスゴすぎるヤツと思った。少しやつれたように見えるN子から喫茶店で話を聞くにつれ、余計にオレには絶対にムリ!と確信し、お嬢さまで何不自由なく暮らしていたN子にそんな根性があったとは……と驚いていた。

しかし、舞台を見たわけではないので何ら確信はないし、必死で頑張ってるN子には申し訳ないのだが、そんな常人ではおよそ耐えられないほどの苦労の経験を重ねたにもかかわらず、N子の演技は以前から全く進歩はないように思えた。

「なぜそんな風に思ったんだろう?」
N子と別れてから、そのことを考えていたら、前述のコーチの言葉が思い出されたんだ。

「君は、演技を楽しんでいるわけではなくて、大変で難しいことをがんばっている”自分”を見てもらいたいと思っている……」

N子は、その時代劇の超大御所、Sさまと自分は似ていると言っていた。だから気に入ってお付きにしてくれて、実家のトラブルなども親身になって解決してくれた……と。

そうか!そう、オレがSさまに感じるのも正に同じものだ。
自分が演技を楽しんで、それで観客も楽しませるのではなく、難しいことを必死でがんばっている「自分の生き様」を観客に(それとも他の誰かに?)見てもらいたいだけなのだ。

オレは思う。
生き様を見せるのは、銀幕ではなく、ワイドショーのスターだ。

オレは違う。
オレはいかに”楽に”楽しく演技が出来るかを必死で考え、必死で学び、さらにその先のハッピーを追い求めたい。どんなに暗い役だろうが大変な辛い役だろうが、楽しんでやりたい。
オレはSさまでも松田優作でもないんだから。

「がんばっている自分を見てもらいたいタイプの人は、その固定観念を正さないかぎり、絶対に”演技の幸せ”には出会えない」

コーチがなぜそう断言できるのか分からないけど、その言葉に真実の薫りがした。


「がんばっている自分」は、親や兄弟だけに見てもらえればいい。

いつか分かってもらえれば、それでいい。

posted by タカシ at 00:57| 東京 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
個人的にプロセスを見せない役者って言えば、いっぱいいるけど、例えば井川遥さんとか、高島礼子さんとか、夏川結衣さんとか……、何か中堅女優さんばっかになっちゃったけど……。

でも、何かああいう「ふだんは全然違う人だぞ、多分」と観終わった後で思わせるような「役に入り込むタイプ」の役者っていいよね。本人も楽しんで演じてるのが伝わってくる。

逆に、何やっても一緒っていう人もいるけど……。
好き嫌いの問題だとは思うけど、そういう人ってあんまり好きじゃない。作品の空気もその人に影響されちゃうし。
Posted by タカシ(自己レス) at 2006年07月12日 04:02
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